
東大を卒業後、アルバイトを転々とし、うだつの上がらない生活を送っていた和彦。ある日、偶然訪れた銭湯でバイト募集の張り紙を見つけ、そこで働かせてもらうことに。やがて和彦は、その銭湯が閉店後の深夜に浴場を「人を殺す場所」として貸し出していることを知る。さらに、同僚の松本が殺し屋であることが明らかになり……。
この映画がマジで面白いっす!
「メランコリック」

「メランコリック」は、深夜に殺人が行われる銭湯を舞台に、東大出身のアルバイトの人生が大きく動き出す、サプライズ満載の変幻自在なストーリー展開で描いたサスペンスコメディ。
監督・脚本・編集
田中 征爾
主演・製作
皆川 暢二
アクション構成・演出
磯崎 義知
映画製作チーム「One Goose」
による長編作品第1弾
松本晃を演じた磯崎義知
副島百合を演じた吉田芽吹
この3人のキャストが非常に印象的でした。
小さな規模のインディーズ映画から始まったものが東京国際映画祭、上海国際映画祭、ジャパン・コネクションなど数々の映画祭で絶賛され、上映館も徐々に増えていった流れという部分では、同じインディーズ映画『カメラを止めるな』と比べられてしまう作品ではあるのだが、今作が決定的に違うのは、『カメラを止めるな』の場合は、事前に結末が用意されていて、そこに向かっていたという部分では、大道のプロットが基盤にある作品であったのに対して、今作は実は物語の動向自体が完全には定まっておらず、試行錯誤によって、脚本の本当の意味での完成と映画撮影が同時並行で作り上げられていったという点で独特の空気感をもった作品である。

主演を務めた皆川 暢二が同時にプロデューサーとしても動き、先に短編を制作し、それを宣材にクラウド・ファンディングで資金を集めていき、完成に至った。
監督の田中 征爾も、ベンチャー企業に勤めていたため、平日は映画に関わることができない、ロケ地である銭湯も営業中は撮影できないということで基本的に金曜の夜と土日に急ピッチで撮影し、10日ほどの短期間で撮り終えた。
予算や時間の都合上、描くことができないシーンもある中で、それを物語や演出によって、どうカバーできるかという試行錯誤が上手く働いた作品であって、環境的にどうしようもない状況が結果的に、巧妙な脚本や今作の独特の空気感に繋がっていったという部分からも、映画の可能性を感じさせる作品だ。

資金がないから、時間がないからと、いつまでも立ち止まっていないで、とにかく今ある環境で作品を仕上げていくというスタンスは、映画人を目指すものの基本でありながら、誰もができることではない。今作が提示した可能性は、後世にも受け継がれていくに違いないだろう。
もともとの着想としては、アクション要素のある映画を撮りたかったという漠然としたものであったが、ストレートなアクション映画すると、予算の関係もあるし、どうしても物語に魅力を持たせることが難しくなってしまう。
そこでアクション映画にはしないで、アクション映画に登場する「清掃人」と言われる、死体処理をする者たちの存在にスポットを当てて描いてはどうだろうかと思いついたことがきっかけで大まかな構図が完成していった。

さらに、監督が当時、個人的にハマっていた海外ドラマ『ブレイキング・バット』で描かれていた主人公の「自尊心」に向き合う様を下敷きとしている他、『グッド・ウィル・ハンティング』『アメリカン・ビューティー』『アニー・ホール』などといった作品のオマージュが散りばめられている。
映画やドラマが好きな監督だからこそ作ることができた、独特な世界観もクセになる作品だ。
「自尊心」という部分では、日本大学芸術学部演劇学科を中退後、映画を学ぶ為にアメリカはカリフォルニア州の大学に渡りながらも、活躍したかった映画業界では、まだまだ力が発揮できていない監督自身の投影であり、主人公が東大を卒業しても、自分が何をしたいかが未だ見つかっていない部分と完全にリンクする。

作品の中で漂う独特の会話の間から生まれるシュールなコメディ感は、監督が好きで人生が変わったほどの影響を受けたウディ・アレン作品のテイストだが、そこにプラス要素として加わっているのが、『ダウンタウンのごっつええ感じ』の中のコント「トカゲのおっさん」だというのは驚きではあるが、それを意識したうえで今作を観ると、確かにその要素は強い。
様々なオマージュ、映画ネタが入る作品でありながら、独自の世界観を作り出しており、モノマネ感を感じさせないで自分のものにしていくのも映画人の基本でありながら、誰にでもできることではない。
全編を通して、主人公たちのしていることは、完全な犯罪行為でありながらも、異質な環境下で構築されていく、不思議な人間関係の危うさと妙な安定感とのコントラスト。
そして、あえて裏表のない、主人公の両親のような、絶対的な表のキャラクターを配置することにで、逆に表の世界にあふれる不安定感というものも演出してみせる。

だからこそ、キャラクターひとりひとりの動向から目が離せず、作品のテイストからしても、逆に「このキャラクターには裏があるのではないか」と疑ってしまう。
正にそれこそが狙いでもあり、ヒロインのユリの独特の距離感が観ている側を惑わせる。それらもふまえて、ユリの最終的なキャラクター造形も監督自身、最後まで悩んだと語っている。
今作、死体処理を扱った作品としては、あえてグロテスク表現がほとんどない。
死体処理を扱った作品として有名なのは、園子温の『冷たい熱帯魚』という作品があり、この作品の中で死体処理のシーンは、かなり生々しく描かれていた。
こういったテイストの作品は、低予算ながら、場を持たせようとグロテスクだったり、性描写のような過激な表現に走るアングラ映画が多かったりする。
別にそれが悪いというワケではないし、そういったテイストがアングラ映画の醍醐味だったりもするのだが、アングラ映画の雰囲気は残しつつ、軸となる物語をしっかりと見せていくというのは、この手の作品において、逆に新鮮であり、これも高く評価される要因であろう。
まあ、何はともあれこの映画を観てほしい。
海外の評価
映画
「メランコリック」の
海外の評価は
どうなっているのでしょう?
海外映画サイトIMDbを調べてみました。

海外映画サイトIMDbでは
271人の投票がありまして
平均点は10点満点で
6.6点
と微妙な評価に
なっています。
まあ、これは仕方ないでしょう。
日本ではウケても海外でウケる様な映画では無いです。
1番多いのが
54人(全体の19.9%)が投票した
7点
2番目が6点
3番目は8点
4番目は5点
です。
5~8点に評価が集中しています。

予告編
まずは予告編をどうぞ!
