
ネタバレ禁には、目次をお使いください('ω')
A24 × アレックス・ガーランド監督
「MEN 同じ顔の男たち」
- なぜ全員同じ顔なのか?: 主人公にとって「自分を支配・抑圧しようとする有害な男たちは、結局みんな同じ(=同じ顔)」という精神的なトラウマのメタファー(暗喩)です。
- 意味不明なラストの正体: 男たちが次々と口から男を産み落とすグロテスクなシーンは、「男性優位主義や女性への加害性が、世代を超えて受け継がれていく呪い」を表現しています。

「MEN 同じ顔の男たち」(原題:Men)は、2022年に公開されたイギリスのスリラー・サスペンス映画です。
夫の死を目撃した過去のトラウマと、目の前に現れる「同じ顔の男たち」の恐怖に対峙する女性の姿を描いています。
『エクス・マキナ』で話題となった鬼才アレックス・ガーランド監督の作品ということで期待して観たのですが……。あれ?なんか違うぞ?と。
最後まで観てようやくその意味がわかってくるような、究極の異色サスペンスホラーに仕上がっています。
元世界ランカーのプロボクサーであり、現役ボクシングトレーナー。
年間200本以上のサスペンス・ホラー映画を鑑賞し、ブログ累計1000記事以上を執筆。
プロの視点から作品の構成や伏線を辛口かつ論理的に分析する映画評論ブロガー。

今回はA24が放つ問題作『MEN 同じ顔の男たち』を考察していくっス。
主演のジェシー・バックリーの「うんざりした冷めきった表情」が最高なんスけど、恋人同士やカップルで観るのは絶対オススメできない危険な映画っスよ!
【作品情報・キャスト】
- 監督&脚本: アレックス・ガーランド
- ハーパー・マーロウ: ジェシー・バックリー
- 同じ顔の男たち(ジェフリー、牧師、警官など): ロリー・キニア
- ジェームズ・マーロウ(夫): パーパ・エッシードゥ
- ライリー(友人): ゲイル・ランキン
本編の結末や、ラストの核心に触れています。
未鑑賞の方はご注意くださいっス!
映画『MEN 同じ顔の男たち』あらすじ&ネタバレ
夫ジェームズの自殺というトラウマを抱えたハーパーは、心を癒やすためにイギリスの田舎町コットソン村のカントリーハウスを借りて、一人で休暇を過ごすことにします。
夫はハーパーへのDVの末、離婚を切り出されたことに逆上し、彼女の目の前でバルコニーから転落死(自殺)を遂げていました。

カントリーハウスに到着したハーパーは、風変わりだが親切そうな管理人のジェフリーに出迎えられます。
その後、近くの森を散歩していたハーパーは、使われなくなった古いトンネルを見つけます。そこで声の反響を楽しんでいましたが、突然、トンネルの奥から謎の人影が叫びながら走ってきます。恐怖を感じたハーパーは走って逃げ出し、広場にたどり着きます。

翌日、前庭に全裸の男が立っているのを発見したハーパーは警察に通報。男は逮捕されますが、ハーパーは逮捕した警官の顔が、管理人のジェフリーと全く同じであることに気づき始めます。
その後、村の教会で出会った少年や、ジェームズの死はお前のせいだと説教してくる牧師、そしてパブの常連客に至るまで、村にいる男たちの顔がすべて「ジェフリーと同じ顔」だったのです。
【狂気の夜】
その夜、釈放された全裸の男や、少年、牧師など「同じ顔の男たち」が一斉にハーパーの家に襲撃を仕掛けてきます。
彼らは皆、亡き夫ジェームズが転落した際に負った傷と同じように、腕や足が真っ二つに裂けていました。ハーパーは包丁を手に取り、次々と侵入してくる男たちと壮絶な戦いを繰り広げます。
【考察】なぜ意味不明と言われるのか?同じ顔の男たちの正体
本作は中盤から一気に不条理な展開になるため、「意味不明」と感じる観客が続出しました。しかし、ここには監督の強烈なメッセージ(メタファー)が込められています。
- 「男は皆同じ」という恐怖: 全員が同じ顔(ロリー・キニアが一人何役も演じている)なのは、ハーパーの目に映る「女性を軽視し、有害な男らしさ(トキシック・マスキュリニティ)を押し付けてくる男たちは、結局どれも同じだ」という心理状態を表しています。
- 男性支配のメタファー: 管理人の無自覚なマウント、少年の暴言、牧師の責任転嫁、警官の職務怠慢。彼らはそれぞれ違ったアプローチでハーパー(女性)を支配し、傷つけようとします。
つまり、この映画は現実の殺人鬼に襲われるホラーではなく、「男性優位社会における、女性の生きづらさと恐怖」を具現化した精神的なスリラーなのです。
【監督の意図】
アレックス・ガーランド監督は本作について、「『男たちは本当に全員同じなのか?』それとも『皆違うけれど、傷ついたハーパーの立場からは同じに見えるだけなのか?』という2つの問いを観客に投げかけたかった」と語っています。
つまり本作は、加害者の異常性を描くだけでなく、「被害者の目に世界がどう歪んで映るか」を主観的に体験させる極限のゴーストストーリーなのです。
【ネタバレ】狂気のラストシーンが意味するもの
映画のラスト、庭で倒れた「全裸の男」の体に異変が起きます。
男の背中が裂け、口から「少年」を産み落とします。その少年が今度は「牧師」を産み、牧師が「管理人」を産み……という、まるで脱皮のようなグロテスクな連続出産シーンが描かれます。
そして最後に産み落とされたのは、死んだはずの夫・ジェームズでした。
血まみれのジェームズがハーパーの隣に座り、ハーパーが「あなたは何が欲しいの?」と呆れたように尋ねると、彼は一言「愛が欲しい(Yeah, love)」と答えます。ハーパーは「そう」とだけ返し、深くため息をつきます。
【ラストの考察:夢オチなのか?】
翌朝、妊娠中の友人ライリーが車で到着し、血だらけの庭の先にいるハーパーが微かに微笑んで映画は終わります。
この一連の出来事は、物理的な現実の出来事というより、ハーパーが自身のトラウマ(夫の呪縛)と決別するための精神世界での戦いだったと考察できます。
夫の「愛が欲しい」という言葉も、純粋な愛ではなく「自分を無条件に甘やかし、許してくれる母親のような存在になってほしい」という身勝手なエゴの象徴と言えるでしょう。
【深掘り考察】グリーンマン神話と「産む男」のメタファー
本作をさらに深く理解するための鍵が、劇中に登場するケルト神話の象徴です。
庭のリンゴの木は「エデンの園(原罪)」を、石の彫刻「シーラ・ナ・ギグ」は女性の生殖力を、そして葉っぱに覆われた全裸の男は「グリーンマン(自然と男根の象徴)」を表しています。
男が次々と男を産むラストシーンは、「本来女性が持つ『命を産み出す力』までも男が奪い取り、自らのエゴ(有害な男らしさ)だけを自己増殖させていく」という、究極の男性優位主義への痛烈な皮肉なのです。

物理的な暴力じゃなくて、ジワジワとスタミナとメンタルを削られるような絶望感。
男の自分でも息苦しくなったスから、女性が観たら「日常に潜むリアルな恐怖」としてもっとエグいダメージを感じるはずっスよ…。
海外の反応、評価とレビュー!
異色映画『MEN 同じ顔の男たち』の海外での反応・評価はどうなっているのでしょう?

- IMDb平均点: 6.1 / 10点
- Rotten Tomatoes: 批評家支持率 69% / 観客支持率 39%
批評家からは映像美やテーマ性が高く評価される一方で、一般観客の支持率は大荒れ。まさに「ハマる人には大傑作、受け付けない人には最悪」という、見事にパックリ割れた評価になっています。
海外のレビュー(抜粋)
私は境界線を押し広げる映画が大好きです。この映画のメタファーは理解できたし、基本的なレベルで意味がある。ラストは完全に壁から外れて不条理の極みになるが、ジェシー・バックリーの演技は本当に素晴らしい。8/10点。
私が今まで見た映画の中で最も奇妙な終わり方。最初の1時間は美しい撮影と素晴らしい演技だったが、その後完全に足並みが乱れ、意味不明な堕落の寓話に変わってしまった。ただ無意味なことを投げつけているだけで、最後の30分は顔を真っ赤にしてしまう。2.5/5点。
撮影技術やジェシー・バックリーの演技への称賛は共通していますが、「露骨すぎる性差別のメタファー」と「不条理すぎる結末」を受け入れられるかどうかで、完全に評価が分かれています。

意味不明なトラウマ映像を体験したい猛者は、ぜひチャレンジしてみてほしいっス!
「MEN 同じ顔の男たち」のような映画は興味深い作品が盛りだくさんです。









