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「ホラー映画で最初に死ぬのは、いつだって黒人」……そんな "お約束" はもう聞き飽きた。
じゃあ、「登場人物が全員黒人」だったら、一体誰が最初に死ぬのか?
全米で批評家から絶賛され、サプライズヒットを記録した映画『ブラックニング(原題:The Blackening)』は、そんな挑発的な問いを投げかける異色のホラーコメディです。

殺人鬼が突きつける条件はただ一つ。「お前たちの中で、一番『黒い』ヤツを差し出せ」。
生き残るために「いかに自分が黒人っぽくないか」を必死でアピールし合う、史上最も気まずくて笑えるデスゲームの行方は? この記事では、衝撃の犯人の正体から皮肉たっぷりの結末までを完全ネタバレ解説します。
映画『ブラックニング』主な登場人物・キャスト
物語の中心となるのは、大学時代の友人グループです。それぞれのキャラクターの性格が、後の「ゲーム」での生死を分ける鍵となります。
| リサ (演:アントワネット・ロバートソン) | グループのまとめ役。弁護士。不誠実だった元恋人ナムディとの再会に心が揺れている。 |
|---|---|
| ドウェイン (演:ドウェイン・パーキンス) | リサの親友。皮肉屋でユーモア担当。ゲイであることをオープンにしている。勘が鋭い。 |
| ナムディ (演:シンカ・ウォールズ) | リサの元彼。浮気性だった過去を反省し、ヨリを戻そうとしているがドウェインには嫌われている。 |
| シャニカ (演:X・マヨ) | 毒舌で豪快な性格。パーティー好きで騒がしいが、仲間思い。 |
| キング (演:メルヴィン・グレッグ) | 陽気でノリが良いが、元ギャングという過去を持つ。現在は更生して結婚している。 |
| アリソン (演:グレース・バイヤーズ) | 知的で冷静。バイレイシャル(混血)であることに複雑なアイデンティティを持つ。 |
| クリフトン (演:ジャーメイン・ファウラー) | 地味なゲスト。大学時代の知人だが、グループの中心メンバーではない。少し空気が読めないオタク気質。 |
| モーガン&ショーン (演:イヴォンヌ・オージ&ジェイ・フェイロー) | 最初にキャビンに到着したカップル。ゲームの最初の犠牲者となる。 |
【ネタバレあらすじ】第1章:恐怖のゲーム「ブラックニング」
最初の犠牲者
物語は、ジューンティーンス(奴隷解放記念日)を祝うため、森のキャビンに一番乗りしたカップル、モーガンとショーンから始まります。
二人はゲームルームで「The Blackening(ブラックニング)」という不気味なボードゲームを発見します。その中央には、差別的な黒人のカリカチュア(ちびくろサンボのような人形)が置かれていました。
突如として照明が落ち、謎の声が「ゲームをしろ」と命令してきます。
ショーンは黒人文化に関するクイズに答えられず、即座に首を矢で射抜かれて死亡。逃げようとしたモーガンも何者かに捕らえられてしまいます。
友人たちの到着と違和感
翌日、リサ、アリソン、ドウェインの3人がキャビンへ向かいます。車中では、リサが浮気性の元彼ナムディを週末のパーティーに呼んだことについて議論になります。
一方、別の車で向かっていたシャニカは、ガソリンスタンドで大学時代の同級生クリフトンと偶然再会し、彼も合流することになります。シャニカはそこで、顔に火傷のような傷がある不気味な店員に睨まれ、恐怖を覚えます。
キャビンに到着した一行は、入り口で怪しげな白人警官ホワイト(演:ディードリック・ベーダー)に止められますが、なんとかトラブルを回避して入室。酒やドラッグ、ゲームで盛り上がる夜が始まります。
【ネタバレあらすじ】第2章:誰が一番「黒い」のか?
命がけのクイズ大会
パーティーの最中、再び停電が発生します。ブレーカーを探して彷徨う一行は、偶然にもあの「ブラックニング」のゲーム盤が置かれた部屋に辿り着きます。
そこには、彼ら一人一人の性格を模した駒が置かれていました。
モニター越しに謎の声が語りかけ、モーガンを人質に取っていることを明かします。
「彼女を救いたければゲームを続けろ」
強要された彼らは、黒人文化や歴史に関するトリビアクイズに挑むことになります。
しかし、「ドラマ『フレンズ』にゲスト出演した黒人俳優を全員答えろ」という難問に失敗。その瞬間、画面向こうでモーガンが襲われる映像が流れます。
究極の選択:最も黒い人間を生贄にせよ
犯人は次に、あまりにも残酷な要求を突きつけます。
「お前たちの中で、誰が一番『黒い(Blackest)』か決めろ。そいつを生贄にする」
ここから、生き残るための醜い、しかし滑稽な議論が始まります。
「私はバイレイシャルだから半分よ」「俺はゲイだから」「俺は妻が白人だ」など、全員が必死に「自分はいかに黒人らしくないか」を主張し始めます。
そんな中、空気が読めないクリフトンが衝撃の告白をします。
「僕は2回の大統領選挙で、両方ともドナルド・トランプに投票した」
この発言に全員がドン引き。「お前が一番、黒人の敵だ!」という理屈(?)で、全員一致でクリフトンを生贄に選出します。
クリフトンは外に追い出され、即座に胸を矢で射抜かれて倒れました。
【ネタバレあらすじ】第3章:反撃、そして黒幕の正体
逃走と殺人鬼との対決
部屋のロックが解除され、友人たちはモーガンを探して助けを呼ぼうとします。
「ホラー映画で二手に分かれるのは死亡フラグだ」と知っていながら、彼らは二手に分かれることを選択してしまいます。
* アリソン、キング、シャニカのチーム
* ドウェイン、リサ、ナムディのチーム
ドウェインたちのチームは、森で警官のホワイトに遭遇。助けを求めますが、ホワイトは直後に首を矢で射抜かれて死亡します。犯人は警官ではありませんでした。
一方、アリソンたちのチームは殺人鬼と遭遇。力を合わせて反撃し、殺人鬼を殺害します。マスクを剥ぐと、その正体はガソリンスタンドにいた不気味な店員でした。
リサたちも別の殺人鬼に襲われますが、リサが撲殺。ポケットの中身を確認すると、最初の殺人鬼と双子の兄弟であることが判明します。
つまり、実行犯は雇われた双子だったのです。
真の黒幕
友人たちが合流し、別の部屋に入ると、そこにはホワイト警官と、死んだはずのクリフトンの死体がありました。
しかし次の瞬間、クリフトンがむくりと起き上がります。
真の黒幕は、クリフトンでした。
彼は防弾チョッキを着て死んだふりをしていたのです。
クリフトンは動機を語ります。大学時代、彼は常にグループから「黒人らしくない」「オレオ(外見は黒人だが中身は白人)」と馬鹿にされ、疎外感を感じていました。
ある夜、彼が自分の「黒さ」を証明しようと無理して大量の酒を飲んだ結果、飲酒運転で事故を起こし、女性を殺してしまいました。
彼はその罪で4年間刑務所に入っていました。
「お前たちが俺の『黒さ』を疑わなければ、俺は事故を起こさなかった。お前らのせいだ!」
彼は逆恨みから、この復讐劇を計画したのです。
【結末】ラストシーンの解説
最後の戦い
クリフトンは全員を殺し、井戸(ショーンとモーガンの死体が捨てられている場所)に突き落とそうとします。
しかし、結束を取り戻した友人たちは猛反撃を開始。
激しい乱闘の末、ドウェインやリサたちが連携し、逆にクリフトンを井戸へと蹴り落とします。
クリフトンは落下しましたが、井戸の底からは彼の不気味な笑い声が響いてきます。彼が完全に死んだかどうかは曖昧なままです。
警察か、消防か?
夜が明け、生き残った友人たち(リサ、ドウェイン、ナムディ、シャニカ、キング、アリソン)は安堵します。
しかし、ここで最後の問題が発生します。「誰に通報するか?」
「警察を呼ぶか?」という提案に対し、ドウェインたちは顔を見合わせます。
彼らにとって、警察を呼ぶことは別のリスク(黒人が事件現場にいると犯人扱いされるリスク)を意味するからです。
ドウェインのアドバイスにより、彼らは「消防署」に通報することを選択します。
到着した消防隊により、彼らは放水ホースで水を浴びせられますが、生きて帰れたことを喜び合うのでした。
映画『ブラックニング』感想とまとめ
映画『ブラックニング』は、単なるスラッシャー映画ではなく、人種差別、ステレオタイプ、そして「黒人性(Blackness)」とは何か?というテーマを鋭く風刺した作品でした。
- 犯人の動機:「黒人らしくない」と言われたことへのコンプレックスと逆恨み。
- 生贄の理由:「トランプに投票した」という政治的スタンスが、死に値する罪として描かれるブラックジョーク。
- ラストのオチ:警察への不信感から消防車を呼ぶという、現代アメリカ社会への強烈な皮肉。
ホラーファンはもちろん、社会派コメディが好きな方にもおすすめの一作です。




