「私の知らないワタシの素顔」
「私の知らないワタシの素顔」原題:Celle que vous croyez 英題:Who You Think I Amはフランスの脚本家、監督、演出家、サフィ・ネブーが共同脚本・監督を務めた2019 年のフランス映画。
50代の大学教授が、28歳の男性に近づくためにSNSで24歳の女性に成りすまし、バーチャル恋愛にはまっていく顛末を描いた心理サスペンス恋愛映画です。
原作は、権威あるフランスの文学賞、フェミナ賞受賞作家カミーユ・ロランスの同名小説Celle que vous croyezです。
キャスト
クレール・ミヨー役
ジュリエット・ビノシュ
カトリーヌ・ボーマン博士役
ニコール・ガルシア
アレックス・シェリー役
フランソワ・シヴィル
クレアの姪、カティア役
マリー=アンジュ・カスタ
クレアの恋人、リュド役
ギョーム・グイ
マックス、クレアの長男役
ジュールズ・フープレーン
クレアの末息子トリスタン役
ジュール・ゴーズラン
クレアの元夫、ジル役
チャールズ・バーリング
ソランジュ役
クロード・ペロン
等が出演しています。
この映画は名作ではないか?離婚女性の心理、そしてSNS成りすましをしてしまった中年女性の素顔…、観てて共感できる部分もあるし、何というか心が痛くなってしまった。
クレール(クララ)には幸せになって欲しいと心から思ってしまいました。
終盤はクレアの元夫、ジルへの怒りで胸がいっぱい‥怒涛の展開からのショック、そして良かった~と思わせる映画のつくりは上手いの一言に尽きます。
SNS成りすましの実態映画と言っても過言ではないほど、リアルな心情を描いています。
一見の価値はある映画ですね。
あらすじ&ネタバレ
フランス文学の中年教授クレールは、50歳で離婚した文学部教授のクレール・ミヨーは、一人で二人の子供を育てている。2人の息子の親権を元夫ジルと共有している。
彼女は精神科医のカトリーヌ・ボーマン博士の心療内科に通っており自分の話をする。
クレールは年下のリュドと関係を持つが、リュドは明らかにクレールよりカジュアルに考えている。彼はすぐに彼女と距離を置き、彼女が電話をかけると、ルームメイトのアレックスが電話に出て、リュドを外出させたことにしてしまう。
年下の恋人リュドに振られて悔しい思いをした彼女は、SNSのFacebookで偽のプロフィールを作り、リュドの友人でルームメイトのアレックスに近づく、クレールの目的はアレックスから元恋人リュドを調べることだった。
クレアはFacebookで「クララ・アントゥネス」という偽の人格を作り、そのアバターにリアリティを持たせるために、魅力的な女性の写真を貼り付ける。
アレックスはすぐに食いつき、二人はチャットでやり取りをする。クレールは、すぐにアレックスに恋してしまう。
しかし、彼女は年齢を理由に彼を失望させる危険性があるため、彼に本当の自分を明かそうとしなかった。
二人は、次第に感情的でサイバーセクシャルな関係を築くようになる。アレックスがしつこく会うように迫ってくるようになると、クレールはクララとして、結婚してブラジルに引っ越すと言い、会う危険を冒すよりも現在の関係を解消する。
アレックスは自分のプロフィールを削除し消息を絶つ、クレールはリュドに彼のことを聞きに行くことになる。リュドは、Facebookで 悪い女に出会い失恋したショックで自殺したのだと知らされる。
このショックからクレールはカウンセリングを受けることになったのである。
このような物語の詳細は、クレールとボーマン医師との一連の心理療法によって明らかにされる。ボーマン医師はクレールに、自分の物語の中で腑に落ちない部分について正直に話すよう求め、クレールは、アレックスとのコミュニケーションで使用したネット上で適当に拾ったものを使ったとボーマンに語っていた「クララ」の写真や動画が、実は彼女が育てた疎遠な姪、カティアのものであることを明かすことになる。
ボーマンは、クレールから、アレックスと知り合ったことで "クララ "の人格の終焉を変えるというストーリーが書かれた書類を受け取る。
物語の中で、アレックスとクレールは、アレックスがクララにフラれた後に知り合い、同棲している恋人同士になるが、同棲していくうちに「クララ」が彼の心の中に残っているかどうかがクレールは気になってしまい、クレールはSNSを復活させ、アレックスにクララとしてまた会いたいと申し込むことにする。
アレックスが "クララ "に電話をかけようとしたところ、クレールが "クララ "に化けるために使っていた隠し電話を見つけ、クレールがクララであったと気がついてしまう。
クレールと対峙するために戻ってきた彼は、彼女を狼狽させてしまい、彼女は後ろ向きに歩いて道路に出て、車に撥ねられ交通事故死した。
ボ―マンはこの物語から、クレールはたとえフィクションの中であっても、自分の幸せを許そうとしないのだと結論づける。
そして、クレールは精神障害の治療のためにクリニックに入院していることが明らかになる。
何故このような悲劇的な結末にしたのかとボーマンに尋ねられたクレールは、クララの容姿として使った姪のカティアが、夫ジルと愛し合うようになったことをきっかけに離婚したことを告白する。長年連れ添った夫が、若く美しい女性に奪われたことによる精神的なショックから現実を直視できなくなったクレールは、クララの美しさと若さに嫉妬し、それ故に彼女の容姿を利用したのである。
ボーマンはリュドに会いにいく。リュドはアレックスから聞かされたクララの声でクララがクレールであることに気づいていたのだが、彼女がタチの悪いいたずらをしているのだと思い、アレックスを深く傷つけた彼女に対して、アレックスが失恋のショックで自殺したと嘘をついたのだと告白する。
リュドからアレックスが現在は結婚し、娘が産まれたことを聞いたボーマンは、その事実を入院中のクレールに知らせる。
クレールは愛したアレックスが生きていたことに喜びを感じる。これで施設を去る覚悟ができたようだ。
しばらくして、別れを告げに来たボーマンに、クレールはどんな可能性もあると希望が持てるようになり、結末は1つではないと原稿を書き直していることを報告する。そして笑みを浮かべながらアレックスに電話をかける。
エンドロールが流れる。
とにかくクレールが可哀そうでした。
成りすましSNSでアレックスを傷つけたことは許せませんが、長年連れ添った愛した夫を若く美しいカティアに奪われ、自信も何もかも失ってしまったのです。
復讐心もあり、カティアの写真を使ったのですが、そこでもまたカティアにはなれない、カティアを超えられないことを痛感してしまうのです。
彼女の描いた小説にその心理が現れていました。
クレバーで離婚を乗り越え、自立した大人の女性を演じているクレールですが、その中身は過去のトラウマに支配された、痛々しく繊細な女性だったのです。
アレックスが生きていたことに心から感謝する彼女は、本当に心優しい女性なのでしょう。
クレールには幸せになってもらいたいですね。