アッリの正体は…
「ハッチング 孵化」
「ハッチング 孵化」原題:Pahanhautoja 英題:Hatchingは2022年のフィンランド映画
体操選手として日々練習に励む12歳の少女が見つけた謎の卵の孵化をきっかけに、一見平和で幸福そうな家庭に忍び寄る不気味な恐怖を残酷童話風の描いたホラー作品です。
第38回サンダンス映画祭でプレミア上映されて一躍評判を呼び、第29回ジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭でみごとグランプリを受賞するなど高い評価を得た、北欧フィンランド発の注目のホラー映画です。
何ともまあ‥不気味で深いホラー映画でした。
長女が見つけた謎の卵の孵化をきっかけに、家族の真の姿が浮き彫りになっていく様を描いたフィンランド製ホラー…。
この映画の一番のポイントは毒母と思うんですけど、毒母を演じるソフィア・ヘイッキラが本当に上手くて、何というか‥映画を観ててめっちゃ嫌いになりました。
それとは対照的に、ティンヤを演じるシーリ・ソラリンナがめっちゃ儚く美しい感じで、この年にあるような子供心を上手く演じており印象に残りました。
怖くは無いけど、ちょっと考えらされるような‥いい映画でしたね。
監督
ハンナ・ベルイホルム
キャスト
ティンヤ役
シーリ・ソラリンナ
母親役
ソフィア・ヘイッキラ
父親役
ヤニ・ヴォラネン
テロ役
レイノ・ノルディン
マティアス役
オイヴァ・オリラ
等が出演しています。
あらすじ&ネタバレ
12歳のティンヤは、元フィギュアスケート選手からインフルエンサーに転身した母親から課せられた体操の練習に励んでいた。ある日、カラスが窓を突き破って飛んできて、一家のリビングを荒らします。母親が大事にしていたシャンデリアも落としてしまいました。
ティンヤはカラスを捕まえて外に放そうとするが、母親は自分の所へ持ってくるように言い、渡すとカラスの首をへし折ります。
悲しんだティンヤは、カラスがまだ動いていることに気づかず、母親の言いつけ通りにゴミ箱に捨てます。
その後、彼女は新しい隣人、レータという少女とフレンチ・ブルドッグに出会います。
その夜、ティンヤは鳴き声で目を覚まします。
彼女は森の中で重傷を負ったあのカラスを発見し、泣きながら石で叩いてカラスを殺し苦しみから解放します。
カラスの近くには卵がありました。
ティンヤは卵を家に持ち帰り大事にします。枕の下で孵化させ、大きくなるとぬいぐるみの中に入れます。
練習でティンヤは苦戦しますが、コーチに励まされ、上達すれば次の大会に出場できると言われます。
家に戻ったティンヤは、母が大工の男と親密そうに抱き合っているのを目撃する。母は彼をテロと紹介し、後に自分のために何かする必要があったのだと自分の行動を説明する。
レータは次の練習でティンヤに加わり、とても才能があることを証明します。
そのため母は、ティンヤの手から血が出るまで練習させました。その夜、ティンヤは怪我をした手で卵を撫でる。
その後、卵は雛鳥に似た奇妙な骸骨のような生き物に孵化します。ティンヤが叫び声をあげると‥驚いたひな鳥は窓ガラスを突き破って逃げ出しました。次の日の夜、巨大なひな鳥はティンヤの部屋に戻ってきました。窓ガラスの破片が刺さり怪我をしているひな鳥を介抱しました。彼女はその生き物をアッリと名付け、ベッドの下で寝かせます。
寝ている間、ティンヤはレータの犬の鳴き声に苛立ち、隣の家に行く幻覚を見ます。目を覚ますと、アッリが自分の上に乗っており、犬の首が切られた死体がそばにあった。彼女が嘔吐すると、アリはそれを食べて栄養にします。ティンヤはアッリを洋服ダンスに隠し、犬を花壇に埋める。その姿を弟マティアスが見ていました。
学校では、ティンヤとレータは犬の行方不明ポスターを一緒に貼る仲になった。その晩、母がティンヤに新しいヘアブラシを渡し、マティアスには何も渡さなかったので、マティアスは怒って犬の死体を掘り起こしリビングにも行って来ます。ティンヤが犯人だと言います。
そしてマティアスは、ティンヤの部屋で怪しい影を見て、ベッドの下に何があるのか探ろうと、マスクをつけてティンヤの部屋に忍び込みます。
アッリは恐怖のあまりマティアスのマスクを切りつける。マスクは真っ二つになったがマティアスは無事であった。階下ではティンヤが発作を起こし始め、二人が精神的につながっていることを示しています。その夜、マティアスは母にティンヤは怪物だと言うが、母は悪夢だと一蹴する。
翌日、レータが代表にななることが決まり、ティンヤの母親は不機嫌になる。
アッリは帰宅途中のレータを追跡し襲います。ティンヤはアッリの脱皮したくちばしを見つけ、生き物がより彼女に似てきていることに気がつきます。その後、ティンヤはレータが入院した病院にお見舞いに行くが、彼女の怪我のひどさと切断された左手に愕然とする。
彼女を見たレータは叫び、ティンヤが逃げ出しました。
家に戻ったティンヤは、アッリに平手打ちの罰を与える。朝、アリは瞳孔を除いて完全に人間になっていた。
レータが入院したため、ティンヤが代表として大会に出場することになりました。母は、大会前のティンヤのストレスを解消するため、ティンヤと一緒にテロに預けることを提案する。テロの家でティンヤは、彼が男やもめでヘルミという乳児がいることを知る。テロと一緒に過ごすうちに、ティンヤはテロが完璧な人生を必要としていないことに幸せを感じ始める。
その後、ティンヤがアッリに餌をやっているとき、テロに見られてしまいます。アッリがテロに襲い掛かろうとしたところをティンヤはが防ぎますが、テロは手を怪我してしまいます。にもかかわらず、彼はティンヤを許し、彼女が本当は競技や体操選手になりたくないのではないかと疑って彼女をかばいます。母がヘルミのことで大騒ぎしてティニャに嫉妬させると、ティニャは自分がいない間にアッリがヘルミを襲うのではないかと恐れるようになるが、母を説得してヘルミを連れて行くことはできなかった。
大会では、母親がブログ用にティンヤの演技を記録しています。ティンヤがルーティンを始めると、彼女はヘルミを殺すためにテロから斧を奪ったアッリとリンクします。ティンヤはアッリを止めるために自ら転んで手首を骨折し、リンクしたアッリを止めることに成功します。
アッリの攻撃を目撃したテロは、ティンヤには深刻な問題があるとマザーに告げ、二人を追い出します。
その場から去る前に車に中で、母親はハンドルに頭をぶつけ、叫びながら鼻血を出し、「あんただけは、私を幸せにしてくれると思っていた」と自分の幸せを壊したのはティンヤだと責めました。
母親は鼻血を出しながらも笑顔で家に帰ります。家では父が母の鼻血を何事も無かったように無視します。
アッリは窓から帰って来ますが、ティンヤはアッリの帰宅を阻止しようと、彼女を寝室の窓から突き落とします。
父はアッリを見てティンヤと間違えるが、アッリが低木の陰に隠れた後、その場を立ち去る。ティンヤは母が近況を記録しているのを見つけ、ティンヤは母に良くなると約束する。
その後、母はクローゼットにうずくまっているアッリを見つけ、無理やり髪をとかす。ブラシでアッリの髪を引き千切ります。母親は驚きますが、アッリは怒り母に襲いかかる。ティンヤがアッリを止めます。アリは顎の両側が裂けるほどの大声で叫びながら逃げる。
ティンヤは、最近の混乱はすべてアッリのせいだと説明し、母親と共にアッリを狩ることを決意する。ティンヤの部屋では、アッリが母親を圧倒し襲い掛かります。母親はアッリの足を刺し、ティンヤも負傷する。
ティンヤは自分が孵化させたのだと説明しようとするが、母親は再び襲いかかり、アッリを守るためにアッリの前に飛び出したティンヤを刺したことに気づく。ティンヤはアリの上に倒れて死に、その血がアッリの体内に流れ込む。
アッリはそれを栄養とし、ティンヤそっくりの姿になり、「ママ‥」と母親を呼びます。
驚いた母親はアッリを見上げます。
エンドロールが流れる。
アッリの正体は…ティンヤの心
アッリの正体は何だったのでしょうか?
母親の高すぎる期待にこたえようとする少女ティンヤ、彼女は母親に愛されたいと心から思っていました。
しかし母親は、SNSで理想の家族を発信する自己顕示欲の塊‥娘を自分の承認欲求を満たすための所有物、もしくは自分が果たせなかった夢を託す存在として扱い、己の幸せだけを追い求めています。
ティンヤは優しすぎる性格の為に、様々なことを我慢し‥ストレスを感じていました。
そしてティンヤの心の奥底の眠る‥闇の欲求があったのです。
その闇の欲求がアッリです。
- うるさい隣の家の犬
- 自分より技術力のあるレータ
- 母親に可愛がられるテロの赤ちゃん
闇のティンヤと言うべきアッリが排除しようとしたのは、ティンヤにストレスを与える排除すべき存在です。
ティンヤと母親の母性の対比も面白かったですね。
アッリを身を挺して守ろうとするティンヤ、それとは逆に自分のことしか考えていない母親‥。
色々と考えらされる要素がありました。