
介護を受ける側、介護をする側…身体も動かなくなり認知症になった老人、そしてその介護によって仕事もできなくなり、人生が崩壊していくその家族‥それを救うにはどうしたらいいんでしょうか?
これはすごく難しい問題、色々と考えせてくれる映画だと思いました。
「ロストケア」

「ロストケア」は、素晴らしい人間性を持つ介護士である斯波宗典(松山ケンイチ)が、実は42人の高齢者を殺していた連続殺人鬼であったが、その裏には「ロストケア(喪失の介護)」と称した、介護される老人とその家族を救うためのケアを行ってたという映画です。
本当に日本の介護の現実と言うか、他人ごとではない‥考えらされる映画です。
介護を限界まで続けていれば、いつしかその人の死を願うかも知れません。しかし、そんな思いを家族にさせてまで生きたいと思うのでしょうか?
尊厳死という言葉がありますが、高齢社会の今、日本も考える時期がやって来たかも知れません。
さて、そんな映画「ロストケア」ですが、元ネタとなるのは作家・葉真中顕の同名小説です。
ただこの映画を観て思い出すのは
「津久井やまゆり園事件」ではないでしょうか?

別名、相模原障害者施設殺傷事件、相模原殺傷事件、相模原障害者殺人事件、相模原障がい者施設殺傷事件と呼ばれている事件です。
どんな事件だったのか?というと
やまゆり園の職員だった植松聖(うえまつ さとし、事件当時26歳)死刑囚が、重度の障害者を「心失者」と呼び、「生きている価値はない」として真夜中に刃物を持って侵入し、45人を殺傷した事件です。 うち19人の方が亡くなり26人に重軽傷を負わせています。
殺人などの罪で逮捕・起訴された加害者・植松は、2020年(令和2年)3月に横浜地方裁判所における裁判員裁判で死刑判決を言い渡され、自ら控訴を取り下げたことで死刑が確定した。
作家・葉真中顕の小説ロストケアはこの事件を題材にしたのでは?と思いましたが、小説は 2013年2月20日に光文社から刊行されています。
事件が起きたのは、2016年7月26日なので事件を題材にしたわけではないようです。
ちなみに、「津久井やまゆり園事件」を題材にして作られた小説はあります。
辺見庸の小説「月」です。さらにこの小説を題材に映画も作られています。
映画「ロストケア」の元ネタは小説であり、実際の実話事件をモチーフに作られた映画ではありませんでした。
しかし、介護殺人というか、今の日本社会の介護の現実を描いており、非常に考えらされる良い映画でした。
主人公である斯波宗典(松山ケンイチ)の行動で、恨みを抱く人もいますが、救われたと感じる人もいました。
何が正しいのか?正しくないのか?は分からないですが、自分自身である事ができなくなり、家族に迷惑をかけて家族を限界まで苦しめながら、生きたいと思うのでしょうか?
かと言って死ぬというのも違う気がします。
軽費で入れる介護施設を国が大量に作ってくれたら良いのかも知れませんね。
ロストケアのような邦画作品は興味深い作品が盛りだくさんです。