『ミッドサマー』ネタバレ徹底解説|アリ・アスター監督の最恐ホラーの結末と考察
ミッドサマー

『ヘレディタリー/継承』で世界を震撼させたアリ・アスター監督の最新作『ミッドサマー』。美しい夏至祭の光景とは裏腹に、じわじわと忍び寄る不穏な恐怖が話題となり、観客の評価が真っ二つに分かれる異色のホラー映画です。

ミッドサマー
ミッドサマー

 

「日差しが降り注ぐ中、気分が悪くなるほど怖い…」「ただのグロい映画じゃない。考察するともっと怖い!」そんな声が飛び交う本作を、映画館で観てきた筆者がネタバレありで徹底レビューします。

あらすじやキャスト情報はもちろん、鑑賞後にモヤモヤするラストシーンの隠された意味まで、深掘りして解説。

アリ・アスター監督の最恐ホラー映画『ヘレディタリー』と比較した感想や、監督が込めたメッセージについても考察しているので、鑑賞済みの方もこれから観る方も、ぜひ最後まで読んでみてください。

「ミッドサマー」作品情報

タイトル: ミッドサマー(原題:Midsommar)
公開年: 2019年(アメリカ) / 2020年(日本)
ジャンル: ホラー、サイコロジカルスリラー、民俗ホラー
上映時間:通常版:147分
ディレクターズ・カット版:171分(約30分追加)
映倫区分: R15+(15歳未満は鑑賞不可)

あらすじ(ネタバレなし)

ダニーとクリスチャンのカップルは破局寸前だった。そんなある日、ダニーの妹が両親を巻き込み自殺するという事件を引き起こした。トラウマに苦しみ続けるダニーを見たクリスチャンは「誰かがそばにいてやる必要がある」という思いから、すぐに別れを切り出すのを思い留まった。

翌年の夏、ダニーはクリスチャンと一緒にパーティに参加した。席上、ダニーはクリスチャンが友人(マーク、ジョシュ、ペレ)と一緒にスウェーデンの人里離れた村を訪れる予定であることを知った。クリスチャンはペレから「自分の一族の故郷であるハルガで、今年夏至祭が開催される。夏至祭は90年に1度しか開催されないので、見に来てはどうか」と誘われたのである。文化人類学を専攻するクリスチャンは、学問的関心もあってハルガ行きを決めたのであった。

ところが、その祭りはただの祝祭ではなく、ペイガニズムの祭りだったのである。そうとは知らずに参加したダニーたちは、一般社会では決して行わないような祭りの催しを見て恐怖する。しかし‥クリスチャンはその村の事を論文の題材に選ぶ‥。

キャスト

監督 アリ・アスター
脚本 アリ・アスター

製作
パトリック・アンデション
ラース・クヌードセン

製作総指揮
フレドリク・ハイニヒ
ペレ・ニルソン
ベン・リマー
フィリップ・ウェストグレン

撮影
パベウ・ポゴジェルスキ

 

登場人物・出演者

主人公ダニー・アルドール役フローレンス・ピュー

ミッドサマー ダニー・アルドール役 フローレンス・ピュー
ダニー・アルドール役
フローレンス・ピュー

パニック障害を抱え、家族を失ったトラウマに苦しむ主人公。彼女の繊細な心理描写と感情の起伏に富んだ演技は高く評価され、本作で一躍スターダムにのし上がりました。

 

ダニーの恋人クリスチャン・ヒューズ役ジャック・レイナー

ダニーの恋人クリスチャン・ヒューズ役 ジャック・レイナー
ダニーの恋人クリスチャン・ヒューズ役
ジャック・レイナー

ダニーの恋人で、優柔不断な性格の大学生。劇中で彼の行動が物語を大きく動かしていく重要な役割を担っています。

 

クリスチャンの友人ジョシュ役ウィリアム・ジャクソン・ハーパー

クリスチャンの友人ジョシュ役 ウィリアム・ジャクソン・ハーパー
クリスチャンの友人ジョシュ役
ウィリアム・ジャクソン・ハーパー

 

クリスチャンの友人マーク役ウィル・ポーター

クリスチャンの友人マーク役 ウィル・ポーター
クリスチャンの友人マーク役
ウィル・ポーター

 

クリスチャンの友人でスウェーデン人の交換留学生ペレ役ヴィルヘルム・ブロングレン

ミッドサマー
スウェーデン人の交換留学生ペレ役
ヴィルヘルム・ブロングレン

 

ロンドンからの旅行者サイモン役
アーチ・マデクウィ

ロンドンからの旅行者コニー役
エローラ・トルキア

村の老人ダン役
ビョルン・アンドレセン

予告動画

「ミッドサマー」はどんな映画?長い映画?

アリ・アスター自身が監督と脚本を務めた作り上げたミステリー色あふれる異色ホラー映画で、人里離れた土地で90年に1度行われる祝祭に参加するため、恋人や友人ら5人でスウェーデンの奥地を訪れた大学生たちが遭遇する想像を絶する悪夢を描き出した作品となっています。

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ちなみに、原題は「Midsommar」、意味はスウェーデン語で夏至祭(ミッドソンマル)を意味しています。

 

本作は147分もありめちゃくちゃ長いんですが‥元々、本作のファースト・カットは3時間45分というさらに恐ろしい長さになっていたそうです。

アリ・アスター監督は現行版より30分以上長いエクステンデッド版も作り出しています(2019年8月17日、本作のディレクターズ・カット版(上映時間171分)が上映されている)。

うわ~長いなあ‥と思われるかもしれませんが、飽きさせない恐怖演出であっという間に時間は過ぎ去っていくので、ご安心して観てください。

なぜ怖い?『ミッドサマー』のホラー要素を徹底解説

多くのホラー映画が「夜の暗闇」で恐怖を演出する中、『ミッドサマー』は白夜の明るい太陽の下で不気味な出来事が次々と起こります。これが本作の最大の特徴であり、精神的な恐怖を植え付ける仕掛けです。

映画が始まると、一見のどかなスウェーデンの田舎村「ホルガ」が映し出されます。美しい花々、素朴な民族衣装、そして優しい笑顔の村人たち。しかし、その平和な光景の裏側には、一般社会の常識が一切通用しないカルト的な儀式や思想が存在します。観客は主人公たちと同じ視点で、少しずつ村の異常性に気づいていき、じわじわと忍び寄る不穏な空気に不安を感じていくのです。

また、本作は主人公ダニーの「トラウマ」を深く描くことで、観客の心に訴えかけます。家族を失った悲しみ、恋人クリスチャンとの不器用な関係性など、彼女の繊細な心理描写が丁寧に積み重ねられます。精神的に不安定なダニーが、村の特異な環境にどう適応していくのか。その過程は、観客自身の不安を煽り、単なるスプラッターホラーとは異なる、より深い精神的な恐怖へと繋がります。

【ネタバレ解説】映画『ミッドサマー』の結末と監督の巧みな演出

※ここから先は映画『ミッドサマー』の核心的なネタバレを含みます。まだ観ていない方はご注意ください。

物語の結末:ホルガ村の残酷な儀式

主人公のダニーと恋人のクリスチャン、そして友人たちは、スウェーデンの奥地にあるホルガ村の夏至祭に参加します。

しかし、祭りの儀式は奇妙で不穏なものばかりでした。

最初の犠牲者は、村の最高齢者が崖から飛び降りる「アッテストゥパン」という儀式を目撃したロンドンのカップルでした。

彼らは恐怖を感じて逃げ出そうとしますが、村人に連れ去られ、その後の消息は不明となります。

次々に友人たちも消えていきます。

村の禁忌を破り儀式を写真に収めようとしたジョシュは殺害され、マークも村人によって皮を剥がれて殺害されます。

クリスチャンもまた、村の若い女性に誘惑され、性的な儀式に参加させられます。

恋人の裏切りを目撃し、悲しみと絶望に打ちひしがれるダニーでしたが、村の女性たちが彼女の悲しみに共感し、共に泣き叫ぶことで彼女を支えます。

そして、ダニーは村の夏至祭の「メイ・クイーン(女王)」に選ばれます。

ラストシーン:ダニーが選んだ「安息」と「狂気」

物語のクライマックスは、夏至祭の最後の儀式です。村人たちは罪を清めるための生贄を捧げることを決め、すでに殺害された友人たち(ジョシュとマーク)、そしてクリスチャンが生贄に選ばれます。

ダニーは、生贄の一人としてクリスチャンを選びます。彼はクマの剥製の中に入れられ、他の生贄たちと共に村の寺院で火を放たれます。炎に包まれるクリスチャンと寺院を、村人たちは笑顔で見守ります。その輪の中にいるダニーは、最初は苦痛と混乱に満ちた表情でしたが、やがて彼女の顔には満面の笑みが浮かびます。

この笑顔は、ダニーが家族の死とクリスチャンの裏切りという現実のトラウマから解放され、ホルガ村という新しい「家族」の中で安息を見つけたことを示しています。彼女は、恐怖の儀式の中で「救済」を見出し、狂気を受け入れたのです。

監督の巧妙な演出と個人的な感想

私自身、この映画を観てまず感じたのは、「これはホラーというよりも、一つの儀式を描いたドキュメンタリーのようだ」ということです。

監督のアリ・アスターは、前作『ヘレディタリー/継承』で予測不能な展開と圧倒的な恐怖で観客を震撼させました。

しかし、『ミッドサマー』では、その手法が大きく異なります。

本作の物語は、カルト村で起こる惨劇という点では『ウィッカーマン』『アポストル』といった作品と共通しています。

そのため、ホラー映画に慣れている人なら、物語の結末をある程度予測できてしまうかもしれません。この点が、『ヘレディタリー』のような驚きを期待した観客からは賛否両論を呼ぶ理由でしょう。

しかし、その「先が読める展開」こそが、アリ・アスターの巧妙な演出なのです。

彼は、観客が「次に何が起こるか」を考える間も与えず、映像と音響で不気味な空気を徹底的に作り上げます。

儀式の不快感、登場人物の葛藤、そして静かに進行する狂気が、観客の五感を刺激し続け、決して飽きさせません。明るい太陽の下で行われる不穏なホラーという、これまでにない体験を観客に与えることに成功しています。

映画『ミッドサマー』ラストシーンのダニーの笑顔に込められた意味

本作で最も議論を呼んだのが、ラストシーンでダニーが見せる満面の笑顔です。

家族を失い、恋人クリスチャンからも裏切られたダニーは、極度の悲しみの中で村人たちと共に涙を流します。

そして、「女王」として選ばれた彼女は、最後の儀式でクリスチャンを犠牲にすることを決断。

クリスチャンが焼かれる様子を見て、最初は恐怖と悲しみに満ちた表情だったダニーの顔は、やがて恍惚とした笑顔へと変わります。

この笑顔は、一体何を意味するのでしょうか。

アリ・アスター監督は、脚本に「ダニーは狂気に堕ちた者だけが味わえる喜びに屈した。ダニーは自己を完全に失い、ついに自由を得た。それは恐ろしいことでもあり、美しいことでもある」と書き記しています。

これは、ダニーがトラウマを抱えた過去や、不安定な恋人関係という現実から完全に解放され、ホルガ村という新しい「家族」を手に入れたことの表れでしょう。

彼女にとって、この村は恐怖の場所ではなく、受け入れてくれる唯一の安息の地となったのです。

最後の笑顔は、恐怖の物語の結末であると同時に、一人の女性が絶望から「救済」される物語の結末でもあります。

観客は、その恐ろしくも美しい結末に、複雑な感情を抱かずにはいられません。

ミッドサマーの評価

映画『ミッドサマー』の評価は、批評家と一般の観客の間で大きく分かれており、非常に議論を呼ぶ作品として知られています。その評価の傾向を、主要な映画サイトのデータをもとにまとめました。

主要な映画サイトでの評価

この映画は、批評家からは高く評価される一方で、観客からは賛否両論を呼ぶ、非常にユニークな作品です。その傾向は日本でも同様で、主要な映画レビューサイトのスコアからも見て取れます。

IMDb (インターネット・ムービー・データベース)

10点満点中、6.9点(ユーザー評価)

Rotten Tomatoes (ロッテン・トマト)

批評家スコア:83%

観客スコア:68%

Metacritic (メタクリティック)

批評家スコア:72点(100点満点中)

ユーザー評価:6.5点(10点満点中)

Filmarks(フィルマークス)

スコア:3.7/5.0(2025年8月時点のデータに基づく)

Yahoo!映画

スコア:3.4/5.0(2025年8月時点のデータに基づく)

映画.com

スコア:3.7/5.0(2025年8月時点のデータに基づく)

批評家からの評価:ホラーを超えた芸術性

海外・日本の批評家は、アリ・アスター監督の独創的な演出を高く評価しています。多くのホラー映画が夜の暗闇に頼る中、本作は白夜の明るい光の中で不気味さを演出。この革新的な手法が「ホラーの新たな地平を切り開いた」と絶賛されました。また、人間関係の崩壊やトラウマからの解放という深いテーマも、芸術性の高い作品として認められる要因となりました。

観客からの評価:好き嫌いが分かれる理由

一方で、日本の観客からは以下のような意見が寄せられています。

  • 「退屈」「話が長い」: 従来のホラー映画のような分かりやすい恐怖やスリルが少ないため、「期待外れだった」「テンポが遅くて眠くなった」という声が見られます。
  • 「生理的に無理」「胸糞悪い」: 美しい映像とは裏腹に、生理的な不快感を煽る描写や、狂気的な世界観が観客に精神的なダメージを与え、「二度と観たくない」と感じる人も少なくありません。

しかし、これらの「不快さ」や「分かりにくさ」こそが、熱狂的なファンの心を掴んでいます。

  • 「考察が楽しい」: 映画の細部に散りばめられた伏線やルーン文字の意味を考察することで、面白さが何倍にも膨れ上がります。
  • 「中毒性がある」: 観終わった後も頭から離れない強烈なインパクトは、リピーターを生み出し、「忘れられない映画」として評価する人も多いです。

このように、『ミッドサマー』は万人受けする作品ではありません。しかし、その強烈な個性と、見る者に深く考えさせる力は、ホラー映画の歴史に名を刻む傑作と言えるでしょう。

 

 

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コメント一覧
  1. さすが早いですね!
    私は今週観に行くので、観終わったらブログ記事をじっくり読ませていただこうと思います。
    予告編だけでも不穏な空気が凄いですよね(笑)
    ヘレディタリーの首ギコギコはトラウマレベルだったので、今回はどうなのかなぁって期待しています。

    • りこぴんさんへ
      コメントありがとうございます
      なかなか話題になっている映画でございます。
      不気味さは流石の一品!ぜひ映画館で!

      • 観てまいりました~!
        相変わらず不協和音に神経が逆撫でされ、謎の壁画にゾワゾワ、終盤の儀式のシーンでは、おば様たちの集団に恐怖を通り越して笑ってしまう始末でした(笑)
        冒頭の、走る車の天地が逆転するシーンで、すでに薄気味悪く気分が悪くなる思いでした…
        観た後にはどっと疲れてしまいますが、やっぱりすごい監督だと思いました(^^)

        • りこぴんさんへ
          コメントありがとうございます。

          アリ・アスター監督は間違いなく才能ありますね。
          なんでも心気症を患い、死の恐怖を常に感じていた時期があり、その経験を作品に生かしているとか。
          確かに死の恐怖を感じる映画となっていますね。
          次回作が楽しみな監督です。

  2. 外部の人間にとっては異常な行動に見えても、村の人間にとっては単なる風習や儀式でしかないところがなんとも不気味でした

    ディレクターズカット版もちょっと気になったけど見に行かずじまいでした汗

    • えいさんへ
      コメントありがとうございます。

      ディレクターズカット版気になりますね~。
      でも、本当に気持ちが悪くなるほど不気味な映画なので・・観なくてもいいかな

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